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越して来たその日、
パティオ(とメロンは呼ぶがそんなすてきなもんじゃない)で夕食をとってると 子供の叫び声が聞こえて来た。何度も何度も。 「異常行動の子供がいるんだな」とメロンは言ったけど、 もしかしたら児童虐待かも‥‥と考えると、アメリカだし身近にあり得るという気がした。 叫び声は昼夜を問わず聞こえた。 数日後、二人で外出から帰って来てうちの通りを車でゆっくり走ってると、 二軒隣の家の前の歩道で三輪車に乗った3歳くらいの男の子が、 ひとなつっこい極上の笑顔で私たちに手を振って来た。 私もメロンもつられて微笑み、「かっわい〜」と言いながら手を振り返した。 ドライブウェイには疲れた感じの南米系の中年女性。 玄関ドアの近くには1歳半くらいの女の子。 男の子が通りに出てしまったので、女性があわてて引き戻すと、 おお、聞き慣れた叫び声が。 スマイリー君はスクリーマー君だったのだ。 虐待された子供があんな極上の笑顔を作れるとは思えないので、やはり異常行動か? あの女性(多分母親)があんなにやつれているのは、そのせいか? 彼は大きくなったら叫ぶのをやめるのだろうか? 声変わりしたどす黒い声で叫ばれるのはいやだな〜。 |
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サラとメロンは、私が97年にメロンのもとを涙ながらに去り、
イタリアから日本に戻って来た後に仕事を通じて知り合ったらしい。 メロンがイギリスに遊びにいったこともあるし、サラがイタリアに来たこともある。 メロンのアイルランドへの家族旅行にイギリスから合流したこともあるらしい。 一緒に旅行した時は、旅費を浮かすためホテルの同じ部屋に泊まり、 イタリアではもちろんサラはメロンのアパートに泊まった。 サラが来る何日か前、そんなことをふんふんと聞いてると (それまでも何度も聞いた話ではあるんだけど) メロンは突然真面目な顔をして、 「一緒の部屋に泊まったりしても、サラとはほんとにいい友達で 全然そんな関係じゃないんだから、誤解しないで欲しい」と言い出した。 あ、全然誤解してなかった。 大体メロンは女から「あの人いい人ね〜」と言われるタイプの男なのよ。 いい人で一緒にいると楽しいんだけど、それ以上になることが考えられないタイプ。 いるでしょ、あなたの周りにも。それよ、それ。 メロンには妹が二人いてどっちとも仲がいいし、おばあちゃん子だったし、 ティーンエージャーになってからは妹達と同室できないので、家族の住むアパートを出て 近所に住むおばさんのうちに居候してたらしいし、 男にとっては好ましくない方法で「女慣れ」しているんだと思う。 女を引きつけはするがかき立てない逆フェロモンみたいなのを発しているのかもしれない。 メロンの一番仲のいい友達5人のうち4人は女性だしね。 ま、そんなこんなで全然誤解も心配もしてないわけよ。 今、朝の9時前。サラはまだ昏々と眠っている。 メロンは午前中は仕事で午後から休暇に入るんだけど、 イギリスの眠り姫は果たして眠りから覚めるのか。 G.B.王子のぺろぺろキスを待っているのかもしれない。 |
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メロンの長年の友人、イギリス人のサラが今日デンバーに到着。
(Saraをサラと書くべきかセアラと書くべきかセーラと書くべきか迷うけど、 ホール&オーツの名曲Sara Smileの邦題は「微笑んでよサラ」だから、サラにする。) 今日と明日はうちに泊まって、土曜日から三人でコロラド州南西部の旅に出発。 5泊6日の後、サラにとっては初めての野球観戦に行く予定。 初めて会うサラは私よりひとまわり小さくて、まるで子供サイズだ。 (はい、正確に言えば私より背が少し低くて、横幅は多いに狭いです。) イギリスアクセントがすてきだわ〜。エリザベス女王みたい〜。 ハシエンダというメキシカンレストランに軽い夕食に行ったけど、 イギリスポンドが強いもんで、メニューのすべてがとっても安く感じるらしい。 マルガリータ1杯8ドルちょっとだから、 他のメキシカンレストランに比べたらかなり高いぞってあたしら思うんだけどね。 ビバ大英帝国。 ああ、アメリカってほんとに斜陽国ね。悲しい。 |
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7月23日(水)
今日はケーブルテレビ、インターネット、電話と3つのサービスをお願いしている会社 コムキャストの工事が入る日。 技術的なことが絡む可能性があるからほんとはメロンにいてほしかったんだけど、 仕事を休めないからと私のみで対応。 技術者が10時から12時の間に来るってことで、いろんな人からさんざん待たされたり キャンセルされたって話を聞いてたから覚悟してたけど、意外と10時過ぎに到着。 テレビがある地下のファミリールームに案内すると、 アウトレットがある壁から少し離れたテレビ置き場まで どういうふうにケーブルを通すかと聞かれたので、 壁伝いにぐるっとまわしてほしいと伝えて、一階に上がって台所の整理にかかっていた。 1時間くらいで思ったより作業も早く終わって、全部使用可能になってたから よし、上出来上出来と思っていたのに、メロンが帰って来てケーブルを見て激怒。 壁伝いじゃなくてカーペットの下をくぐらせるのが当たり前だって言うんだな。 そんなことあんた言わなかったじゃない。 日本じゃカーペットの下なんかくぐらせないから、 言ってくれなきゃそれがアメリカじゃ当たり前なんて言われたって困るよって言うと、 技術者は知ってて当たり前だから、あんたにどうするのか尋ねること自体おかしい、 壁伝いって言われた時、 けっ、馬鹿な女、オレは楽でいいけどねって笑ってたはずだと言いやがる。 むかつくね〜、この男。メロンのことよ、技術者じゃなくて。 でも、ここでメロンに怒りを持ったままだとこの先の生活が思いやられるので、 とりあえず怒りは技術者に向けることにした。 明日メロンがコムキャストにクレームの電話を入れてやり直しをさせることになった。 7月24日(木) 「今日1時にコムキャストの技術者が来るから」とメロンから電話。 あんね、あたしゃいやだよ。 あんたがいなさいよね、文句つけるのあんたなんだからと言うと、 意外と素直に帰ってくることになった。 1時ちょっと過ぎに技術者登場。 昨日のは寄越さないでくれとメロンがお願いしたらしいが、 やって来たのは若い女の子。れっきとした電気技術者らしい。かっこいい〜。 床のケーブルを見て、「これはひどい仕事ですね」って言ってた。 私は自分でコの字型の釘を使ってケーブルを壁に打ち付けないといけないと思ってたけど、 そういうのも技術者がやってくれるんだろうか。 実家の配線工事なんて全部父が自分でやってたから、世間の相場はさっぱり分からん。 結局メロンの言ってたようにカーペットの下をくぐらせたりはしないらしいけど、 女子技術者はドリルで壁に穴をあけて、ケーブルが見えないよう物置の中を這わせたり、 会社には内緒ですよと何メートルか余分にケーブルをくれて 通路をケーブルが横切るのを避けて壁から天井伝いにぐるっと廻せるようにしてくれたり、 メロンの話し相手になってくれたりと、至れり尽くせりの作業をしてくれた。 彼女が帰る時、メロンが何かを渡して、 「え、そんな、いいんですか?」 「とっときなさい」 みたいなやり取りがあって、チップあげたんだなあ、普通渡すのかなあなんて思ってたら、 普通はやらなくていいらしい。 いくらあげたのって聞くと、40ドルって。 すっごいいい子だったし、仕事は丁寧で速かったし、ケーブル余分にくれたしって いろいろ言い訳してたけど、チップというより姪っ子にお小遣いあげるおじちゃんだね。 ま、よかろう。 |
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7月22日(火)
さていよいよ引っ越し当日。 8時半から9時半の間に来る予定だった引っ越し業者ベイリーズのトレーラーが来たのは、 アンタッチャブルだったガレージの荷物をどさどさと箱詰めしている最中の8時10分。 (ったくなんだよ、メロンお前の靴が詰まったこの大きな箱は。 いくら靴を持ってても足は二本だろ。とっとと処分しろよ、と胸の中でつぶやく。) 来たのは屈強なスラブ系の大男二人と、背は低いけど胸板が厚い南米系の男一人。 メロンが聞いたところ大男はボスニア出身の親子で、もう一人はメキシコ出身だった。 作業通路となる部分の床にカーペットを敷いて、あっという間に荷出しが始まった。 テーブルや椅子なんかの家具は毛布大のキルトで包んで傷がつかないようにして、 ソファーは大判ラップでぐるぐる巻き。 ベッドも解体されて、マットレスは専用の箱に入れられトレーラーに運び込まれる。 いや、あざやか。私とメロンは二人台所でコーヒー飲みながらハルク達にただ見とれる。 強い男ってすてきね〜。お姫様抱っこして〜。 10時前にはもう家は空っぽになって、新居へと移動。 新居ではリビングに立って、運び込まれる荷物の置き場所を指示するのが私の役目。 でも、一階に置いておくものより地下に行くものの方が遥かに多く、 それもほとんどが本や書類なんで重たい箱ばかりで(小さい箱だけど)、 なんか申し訳なくて「地下にお願いします」と言う声がどんどん小さくなる。 メロンにチップいくらあげるのって聞くと、一人15ドルくらいかなあって言うんで、 私にしてはとってもとっても珍しく20ドルにして、お願いとチップを多めにした。 ほんとは相場は分からず、一人30ドルくらいなのかしら?とも思ってたんだけど、 ま、そこはそれ。 トレーラーが私たちより少し遅れて新居に着いた時、 引っ越し業者の監督官がチェックに来ていた。 メロンがすばらしい仕事ぶりだとほめると、 ハルク達がベイリーズで一番のクルーだと言われたそうだ。 メロンがイタリアから引っ越して来た時、アメリカでの受け入れ業者がここで、 ワイングラスのひとつも割れてなかったので、絶対ここにすると決めたらしい。 しばらく前に会ったメロンのいとこの子供がデンバー市内で引っ越した時、 カ○ボーイ・ムービングとか言うところに頼んだけど 乱暴で物は壊すし失くすし最低だったなんて言ってたし、業者選びって大切ですね。 私だったらきっと値段の安さだけで決めちゃうと思うけど。 1時頃運び込み完了。 見積もりでは1,000ドル行ってたけど、 自分たちで少しずつ荷物を運び込んでて彼らの作業時間を短縮できた分 実際にかかった費用は安くなって700ドル台だった。らぶり〜。 ハルク達、ありがとう。 私も荷物だって言えばお姫様抱っこしてくれたかな〜。 |



